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ロシア人力士の大麻報道と裁判員制度


 表題のタイトルがなぜ結びつくのかと思われただろうか。

 まずは最近の角界を騒がせているロシア人力士の大麻報道を考えてみたい。報道の内容はネットに幾らでも落ちているからそれを見ていただくとして、私はこの報道に違和感を感じている。
 どこに違和感を感じているかというと、それは「検査結果から黒と出ているのに、なぜ彼らはやったと認めないのか?」という部分だ。

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 昨日お昼の番組で、和田アキ子さんがこの大麻問題を評して、「こんなに正確な科学的鑑定で大麻反応が出ているのに、なんであのお相撲さんたちは認めへんのやろ?おかしやろ?」と居並ぶゲストメンバーたちに賛同を求めていた。求められた全員が、うんうんと同意していた。
 この和田アキ子さんの疑問は、実にもっともで、それが世間一般の素朴な感覚であることはよくわかる。

 しかし、検査結果から黒と出たのかどうかはこの際重要ではない。

 検査自体は、和田アキ子さんご指摘のとおり、全く正確なんだろうと思う。力士たちの尿から大麻の反応が出たということは、あまり疑いが持てない。だから力士たちの体内には大麻がとりこまれたという事実はあったのではないかという気がする。検査のやり方が正しいとか間違っているという議論はどうでもいい。

 問題は力士たちが、<自ら分かって大麻を吸引したのか>どうかということだ。

 どうも和田アキ子さんにしろ報道機関にしろ、力士たちの体内から大麻が出たというだけで、それでもう鬼の首をとったように「こいつはやってる!なんで認めないんだ!相撲協会けしからん!」となってしまっているように見える。しかしそれは短絡的で危険だ。
 受動喫煙と同じく、どこか場末の飲み屋で隣の客が大麻を吸っていたのかもしれない。角界の裏側で、北の湖理事長だとか外国人力士を陥れたいという魑魅魍魎が跋扈しているのかもしれない。
 いずれにせよ、「本人が大麻と承知して吸ったこと」の証明が相変わらず見えてこないのだ。もとより力士本人たちはやっていないと述べている。

 大麻反応が出たから黒、という即断は、事実の証明がどういうものなのかを全くわかっていない危険なものというべきだ。

 もちろん、火のないところに煙はたたずの喩えもあるように、もしかしたら力士たちは本当に黒なのかもしれない。今でこそ報道はされていないが、「何か裏の事情」があるのかもしれない。しかし、それが報道からは全く見えてこない。
 ここが問題なのだ。鑑定結果が黒だからやっているという報道にしか見えないところに危機感を覚える。

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 この危機感が、まさに裁判員裁判に対する危機感だ。

 和田アキ子さんのような裁判員がひとりいて、「検査結果が黒やったら黒やろ!やってないなんてゆうほうがあかん!そやろ?」とか熱弁をふるったらどうなるだろうか。ほかの裁判員が、うんうん、と首を縦に振る光景は想像したくもない。
 力士はやっていないと言っている。でも確からしい検査でその体からは大麻反応が出ている。そこで力士たちの体内にどうやって大麻が入ったのか? これを十分審理検討するのが刑事裁判だ。そしてその十分な検討を民間の素人さんたちにも参加してやってもらおうというのが裁判員制度だ。
 即断はいけない。刑事裁判の鉄則は無罪推定だ。判決を出す最後の最後まで、「もしかしたらこの人はやっていないのかもしれない」という疑問を持ちつつ参加するのが鉄則だ。早い段階から「やってるに違いない」はダメだ。

 もちろん裁判員裁判にはプロの裁判官も参加するわけだから、こんな光景になったら必ずプロの裁判官が助け船を出すに違いない。だから裁判員の中に和田アキ子さんが混じっても別におかしくはなるまい。
 問題は、プロの裁判官の中に、間違った意識を持った人がいた場合だ。「検察官が黒ゆうたら黒やろ!」という裁判官が出てきたら(そんなストレートな物言いは当然なさりませんが)、裁判員はみんなうんうんといわざるをえないのが、今の日本だったりすると怖い。

 でも、今の日本の報道はとっても怖いのだ。
 裁判員制度実施を間もなく控えるこの時期に、こんな素人くさい報道のあり方でいいのだろうか。