― 民事裁判の仕組み 

民事裁判って?

 民事裁判とは、皆さんがイメージするいわゆる「裁判」のことです。ほかにも、刑事裁判がありますが、これもイメージとしては同じといっていいでしょう。
 民事裁判で扱うのは、個人や会社間での争いごとの解決です。例えば、貸したお金を返してくれないとか、離婚したいとか、慰謝料を請求したいとか、こういった請求で、当事者間の話し合いで決まらなかったものは、すべて民事裁判にして裁判所に決めてもらうことになります。


裁判に弁護士は必要?
 民事裁判は、自分自身で対応することが可能です。弁護士を立てる必要はありません(本人訴訟といいます)。
 しかし、形式の整った書類を作成したり、証人尋問などテクニックが必要な場面がありますので、普通は、最初から弁護士に全部依頼して対応するのがお勧めです。この場合、弁護士は、あなたの「訴訟代理人」として全権を委任されて行動しますので、あなた自身が裁判所に毎回出頭する必要はありません。
 簡易裁判所などでは本人訴訟が比較的多く行われていますが、地方裁判所では希ですので、地方裁判所で扱うような事件の場合は弁護士を依頼するのが無難です。

お金と時間がかかるといわれるのはなぜ?
 裁判は、お金と時間がかかるとよく言われますが、それはケースバイケースです。
 まずお金ですが、これは弁護士報酬が多くを占めると思いますので、このHPの「弁護士の報酬」を参照してください。
 弁護士報酬以外にも、仮に本人訴訟でやったとしても、裁判所の手数料などが結構かかる場合があります。特に、申立手数料は、請求する金額に応じて法律で決められていますので、ご自分で提訴する場合は、裁判所に確認する必要があります(ちなみに、100万円の請求訴訟では8,600円、1000万円では5万7600円)。
 次に時間ですが、これは裁判所の都合によります。
 裁判というのは、一回限りで終わるものは多くありません(少額訴訟などを除く)。慎重に審理しなければならないため、最低でも数回は期日(=裁判)が開かれます。
 この期日と期日の間が、普通、1ヶ月程度開いてしまうのです。というのも、裁判所は沢山の事件を抱えており(裁判官一人あたり300件以上と報道されていました)、あなたの事件ばかり毎日審理するわけにはいかないからです。このため、開かれた期日の最後に、次回期日を入れるため(歯医者の予約と一緒)、翌日というわけには行かず、1ヶ月程度先になってしまうのです。
 こうやって期日間に時間をとられるため、簡単な裁判でも半年くらいかかってしまうことが多くありません。ただ、大抵の裁判は、1年程度では終わる印象です。複雑なものになれば何年もかかることがありますが、それほど多くはないような気がします。

「原告」と「被告」
 裁判を起こすことを提訴、起こされた裁判に対応することを応訴といいますが、ここで提訴する人のこと、つまり何かを請求する人のことを原告といい、応訴する人、つまり請求される人を被告といいます。
 被告というと刑事事件を連想してしまうため聞こえが悪いですが、民事裁判では、別に被告が悪いことをしたという前提で一方的に裁かれるわけではありませんので安心してください。便宜上、原告と被告という呼び方をしているだけで、良い悪いの色の付いた言葉ではありません。

提訴の仕方
 原告がまず何をすべきかというと、それは「訴状」と「証拠」書類を管轄裁判所に提出することです。これを提訴といいます。
 訴状は、法律の要件に適った形で、自分が請求したい事柄を書式に従って記載する必要があります。曖昧な請求は受理してもらえません。したがって、法律的な知識がなければ完璧なものは書けないでしょう。
 証拠は、例えば契約書だとか不動産登記簿謄本だとか、書類として請求を客観的に裏付ける資料のことです。証拠がなければ、どんなに優れた主張(請求)であっても裁判所は絶対に認めてくれません(証拠裁判主義)。ただ、完璧な動かぬ証拠である必要はなく、それなりに主張を裏付ける資料があればいいわけです。証拠の信憑性(証拠力)に応じて勝訴の見込みは変わってくるわけですが。
 これらの訴状と証拠を、同じものを3通作って(うち1通は自分の控え)、2通裁判所に提出します。なぜ2通提出するかというと、1通は裁判所用(正本といいます)、もう1通は被告に送達する用(副本といいます)として使うからです。
 訴状には、予め決められた手数料を貼付しなければなりません。
 また、訴状を提出する裁判所は、管轄といって、法律で決められています。適当な裁判所に提訴しても受理してもらえません。
 管轄の決め方は実際いろいろありうるのですが、取り敢えず覚えておいてもらえばいいこととして、「裁判は敵地に乗り込んで行って行う」という点です。つまり、被告の住所地を管轄する裁判所に訴状を提出するのが原則です。
 この場合、請求額が90万円以下は簡易裁判所、90万円を超えれば地方裁判所です。家事事件(離婚や相続など)は、家庭裁判所が管轄となるのが原則です。

応訴の仕方
 提訴されると、必ず裁判所から原告が提出した訴状と証拠(副本)が、特別送達という一種の書留であなたのところに郵送されてきます。
 裁判所から訴状が送られてきたら、もっともなものであろうと、或いはいかに荒唐無稽なものであろうと、応訴するのが原則です。下らないと無視してしまってはいけません。
 なぜなら、提訴を無視して、指定された期日に答弁書も出さず出頭もしないでいると、原告の言い分を全て認めたものとして原告の勝訴判決が出ることになるからです。これを欠席判決といいます。欠席判決が確定してからでは、まず争う途はありませんから、あなたにしてみれば下らない裁判を起こされても、必ず応訴して、下らないということを主張立証すべきです。
 この原告の訴状に対して、最初に被告が提出する書類のことを「答弁書」といいます。
 答弁書には、訴状の記載事項に対する認否・反論を詳しく書くことになります。当然、こちらがわの反論を支える証拠があれば、これも提出します。これを反証といいます。
 なお、第一回目の期日は、原告と裁判所の都合だけで決められた日時が一方的に指定されますので、どうしてもその日に都合が付かなければ、答弁書だけを提出しておけば初回に限って欠席することができます。ただ、次回以降は出頭しなければいけませんので、予め裁判所に連絡して次回期日を打ち合わせておかなくてはなりません。

その後の訴訟進行
 原告が提訴し、被告が応訴すると、裁判が本格的に始まります。だいたい1回の裁判自体は、数分からせいぜい15分以内に終わるのが普通です(証人尋問期日を除く)。
 このように裁判所ではいいたいことを口頭で述べる時間は殆どありませんから、主張したいことがあれば、それは予め書面の形にして提出します。これを準備書面といいます。
 そして、裁判所は、事案の内容と当事者の意見を聞きながら、適宜和解(判決で一刀両断するのではなく、話し合いで解決する方法)を探ります。
 日本の裁判は、多くがこの和解で終わります。和解の時期は、裁判の終わりの方(主張整理後或いは証人尋問)でなされることが多いように思います。
 裁判の流れは、大雑把に言うと、
  1 第1回期日 (訴状、答弁書陳述)
  2 第2〜○回期日 (主張整理)
  3 第○回期日 (証人尋問)
  4 第○回期日 (和解勧試)
  5 第○回期日 (判決)
という流れを辿るのが普通です。最初のうちA主張整理の段階で、双方の言い分や書証などをお互い全部出し合って、その上で、最後に証人尋問を行うというイメージです。

和解と判決
 裁判は、争いごとの終局的解決を求めるためのものですから、必ず何らかの解決策が出て終わります。
 この解決策の出し方に、和解と判決があります。
 判決とは、原告の言い分が正しいか被告の言い分が正しいか、裁判官が独自の判断で一刀両断に決めるものです。白黒決着が付くわけです。
 一方和解とは、裁判官が判決をせずに、訴訟の途中でお互いが一定の譲歩をして裁判を途中で終えてしまうものです。あくまでも話し合いですから、別段強制されるものではありません。どうしても判決をもらいたければ、和解する必要はありません。
 ただ、和解には判決と違って次のようなメリットがあります。
@ 話し合いで終わるため、相手の任意の履行が得られやすい(判決の場合は、強制執行せざるを得ない)。
A 判決の場合は、不服のある相手方は控訴・上告できるため、紛争が長引くが、和解の場合はそこで終わりとなる。
 特に証人尋問後の和解では、裁判官が一定の心証(どちらが有利か)を抱いているので、負けそうな側の当事者にしてみれば、全面敗訴とならずに済むメリットがあります。

裁判に不服がある場合は?
 和解で終えた結果を後になって不服として争いを元に戻すことはできません。
 しかし、判決に不服がある場合は、言い渡しを受けた日から14日以内に高等裁判所に控訴することで、もう一度裁判を受けることができます。
 ただ、控訴の裁判は、全くの裁判のやり直しではなく、第一審の裁判の続きでしかありませんから、何か新規な証拠でも出せない限り、第一審の結果が覆ることは多くありません。
 

<東京弁護士会所属>
弁護士 小 川 義 龍
<第一東京弁護士会所属>
弁護士 遠 藤 幸 子

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