― 法曹(弁護士・裁判官・検察官)になれるまで 

法曹って?
法曹とは、弁護士、判事、検事の三者をいいます。
 これらは法律家ともいいますが、法律家というと司法書士や税理士、弁理士、裁判所書記官、公証人なども含まれますので、特に弁護士、判事、検事の三者に限って、法曹という言葉を使って括ります。
 この法曹になるためには、原則として司法試験に合格して、司法研修所を卒業しなければなりません。

司法試験
 司法試験は、難関試験の代名詞に使われますが、確かに、受験した身から見ても難しい試験だったと思います。
 ただその難しさは、決して暗記だとかパズルのようなことを求められる無意味なものではなく、法曹適格性を多角的に判断する優れた試験のように思います。
 また、受験資格に制限はありません。年齢、学歴、国籍、あらゆる制約のない平等な試験です。

司法試験の中身
司法試験は、年に1回、全国で同時に実施されます。
 大きく分けて4つの試験から構成されています。
 まず司法1次といわれる1次試験で、これは一般教養科目の試験です。大学入学のセンター試験のようなものと思ってください。したがって、大学の一般教養科目(2年生)を終了した人は、免除されます。
 次に司法2次といわれる2次試験が司法試験の本体というべき試験です。これが3つに分けられます。
 まず例年5月の母の日に行われる「短答式試験」です。
 これは5肢択一で60問程度の問題を3時間程度で解くものです。問題数は少ないですが、1問あたりの問題量がかなりあるので、ゆっくり考えているとまず時間切れになります。憲法・民法・刑法の3科目について行われます。
 この試験で、受験生の10分の9程度が不合格になりますので、俗に足切り試験と言われます。
 次に例年7月後半に行われる「論文式試験」です。
 これが司法試験の最難関といわれる天王山的な試験です。憲法・民法・刑法・商法・刑事訴訟法・民事訴訟法の6科目について、1科目2問2時間で行われます。
 論文試験と言っても、思い思いのことを書けばいいのではなく、問題に応じて法解釈と事例適用を手際よく行った分かりやすい文章を書き切らなくては合格できません。
 税理士試験などと違って、科目合格はありませんので、ここで不合格となったらまた翌年度は短答式試験から出直しです。
 最後に例年10月に行われる「口述式試験」です。
 論文式試験と同じ科目について、1科目20分程度、二人の試験委員と1対2で法律問答を試されます。会社のいわゆる面接試験とは違いますので、趣味とか出身地とか抱負とか、こういった雑談は一切ありません。ひたすら法律的問答を高名な学者二人を相手にして行わなくてはなりません。自分が、教科書で勉強したような有名な先生と初めて相対して問答するわけですから、その緊張感たるや、経験したものにしかわからないでしょう。私も、試験前夜は、眠れなかったりお腹が痛くなったり(笑)。
 こうやって全部の試験を全てクリアーして、初めて司法試験に合格できるわけです。
 私が受験したころは、試験科目も今より多く、合格者も年間500人程度でしたので、合格者の平均年齢は27〜8歳くらいでしたが、今は、試験科目を減らし、合格者数も1000人程度に増やし、しかも受験3回以内の者に対しては優先的に合格させる優先枠が設けられましたので、平均年齢は24〜5歳まで下がってきているようです。それでも、もともとも受験母胎が、受験の腕に覚えのあるものばかりしか受けませんので、難関であることには変わりありません。

司法試験制度の意味
 司法試験に受かったというと、よく「六法全書を暗記したんでしょう?」とか、「何年も一日中勉強していたの?」と尋ねられます。
 しかしそんなことはありません。
 司法試験は、確かに最低限の知識は暗記しなければ絶対合格できませんが、全てを暗記したからといって合格できる試験ではありません。
 法曹としてやってゆける能力を多角的に試される試験ですので、1.短答試験では、基本的知識と事務処理能力を、2.論文試験では、法的思考力・解決能力と文章表現能力を、3.口述試験では、咄嗟の法的判断力・論理性と口頭表現能力をそれぞれためされているものだと理解できます。
 いずれの能力も、法曹としては不可欠なものですから、これらが試験で認められなければ、要するに法曹としてはやってゆけないわけです。
 そう言う意味で、数学やら物理やら歴史やら、ひたすら広範囲に暗記してテクニックを磨けば合格できる学校の入試などとはちょっと違います。
 そもそも、微積分を学んでも実社会には余り役立ちませんが、司法試験の勉強は法曹界では常に役立つ知識ばかりです。

司法試験合格後は?
 司法試験に合格したら、すぐに法曹になれるわけではありません。
 あらためて司法研修所に入所して、1年6ヶ月の研修(司法修習)を受け、最後に卒業試験(いわゆる2回試験)に合格しなければなりません。
 この司法研修所のシステムは稿を改めてご紹介しましょう。

司法試験合格以外の方法はあるか?
 司法試験に合格する以外に法曹になる途があるかというと、ごく例外的にあります。
 たとえば、大学の法学部の助教授以上を5年以上務めると弁護士になることができます(弁護士法)。こうして弁護士になった上で、裁判官や検察官になることもできるわけです(裁判所法・検察庁法)。
 ただし、法律の条文上は、助教授以上5年で簡単に弁護士になれるように見えますが、実際の運用はどうかというと、かなり厳しく審査されます。どこで審査するかというと、弁護士会に常議員会という自治議決機関があって、ここで入会申請のあった方について入会審査をするわけです。
 この際、弁護士法では明らかに書いてありませんが、審査基準として、当該教授の法律学における実績(論文・知名度等)、当該大学の司法試験合格者数など、要するに司法試験に合格していなくてもそれと同等の能力を有するかどうかを改めて審査しますので、申請があってもはねられる学者も結構います。したがって、これまでに弁護士資格を認められた学者は、いわゆる有名な学者が殆どで、年間数人程度に限られているというのが実態です。
 また、外国で弁護士資格を取った者については、「外国法事務弁護士」という資格で日本で弁護士活動ができます。ただ、この外国法事務弁護士は、当該外国法に関わる法律事務を行うことができるのが原則ですので、日本の法廷活動はできませんし、法律事務全般について日本の弁護士と同様の活動ができるわけではありませんので、世間のイメージする日本の弁護士とは全く別物と考えていいでしょう。
 結局、法曹になるためには、司法試験に合格することが一番の早道ということになります。
 

<東京弁護士会所属>
弁護士 小 川 義 龍
<第一東京弁護士会所属>
弁護士 遠 藤 幸 子

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