― 法律業界用語あれこれ 

 どの業界にも、業界独特の用語があるものです。
 ここでは、法律業界独特と思われる用語、或いは独特とまではいえなくとも
よく使われる用語を思いつくままに列挙してみましょう。
今後も適宜追加してゆきます。
 なお「→」以下は、用語例です。

いそ弁  居候弁護士の略。
 今は、勤務弁護士と言われることが多いものの、未だに根強く残っている言葉。詳細は、こちらをご覧下さい。

→「彼はいそ弁なのに、個人事件で大分儲けているみたいだ。」

ボス(弁)  いそ弁に対して、経営者側の弁護士をこう呼ぶ。ちなみに、いそ弁ではあるが、先輩格の弁護士を「兄弁」(あに弁)ともいう。

→「うちのボスは、人使いが荒いね。」

派閥  このホームページの弁護士日記を書かさずお読みの方はお馴染みと思うが、弁護士会内で弁護士同士が親睦を図ったり、役員選挙に臨んだり、政策を提言したりする集団。政治家の派閥のような生々しいものではない。

→「今度の派閥では、日弁連に提出する政策を打ち合わせよう。」

会務  弁護士会における仕事のこと。弁護士はすべて日弁連と地方単位弁護士会に所属しているが、これらの弁護士会内には、最高議決機関としての「常議員会」や、各種提言や実務をとりまとめる「委員会」などがある。これらの委員会活動のことを会務という。ちなみに、会務はボランティアである。

→「あの先生は会務ばっかりやっていて本業で稼げているんだろうか。さしずめ多重会務者だね。」

東弁  東京弁護士会の略称。東京には弁護士会が3つあり、東京弁護士会は東弁、第一東京弁護士会は一弁、第二東京弁護士会は二弁という。どの弁護士会も東京弁護士会から派生した歴史を持ち、弁護士会としての優劣はない。
 なお、「日弁連」と言ったら、日本弁護士連合会。東弁を含めて各地の弁護士会は、全て日弁連の傘下にある。
 ちなみに、大阪弁護士会は、「だいべん」と言うのかと思ったら、確かにそう呼ぶこともあるそうだ。東弁ほど通有ではないそうだが。あまり言い響きじゃないね(笑)。

→「東弁など東京三弁護士会の会長経験者と大弁の会長経験者とが、交互に日弁連会長になるケースが多い。」

会員  弁護士は全て、日弁連と、その下部組織である各地の弁護士会(単位弁護士会という)に所属している。この弁護士会に所属していることを、会員という。弁護士=弁護士会員である。
 弁護士会の会員でない弁護士は存在しない。したがって、弁護士会を退会したり除名されたりすると言うことは、弁護士でなくなると言うことを意味する。

→「会員は日弁連や単位弁護士会に毎月会費を納めている。」

法廷  裁判の開かれる日のことをいう。裁判が行われる部屋を法廷と言うが、裁判の日そのものもこう呼ぶことがある。

→「今日の法廷は散々だった。」 「法廷に遅刻しそうだ。」

期日  これも裁判が開かれる日のことを言う。こちらの方が、訴訟法的な正式名称に近い。ちなみに民事裁判では「口頭弁論期日」とか「弁論準備手続期日」、「和解期日」と、刑事裁判では「公判期日」というのが正式名称だが、長くて面倒なので、どれも「期日」という。

→「次の期日は再来月だってさ。」

裁判所  裁判所の建物自体を呼ぶことも多いが、裁判官のことをこうよぶこともある。訴訟法上、裁判を行うのは、個々の裁判官というよりも「裁判所」と規定されていることがあるのに由来する。

→「ただいまの裁判所のご意見は十分検討させていただきたいと思います。」

書面  裁判で提出する各種書類を総括してこう呼ぶ。
 訴状、答弁書、準備書面、各種申立書、弁論要旨など。

→「昨日、書面を書いていたら、午前様になっちゃったよ。」

起案  書面を書くこと。或いは、書面の下書き。

→「君の起案は、なかなか優れた法律構成だね。」

事件受付  裁判所で訴状や申立書などの書面を最初に受理してもらう窓口。企業などの案内的な意味での受付とは違う。裁判所書記官が執務していて、書面の形式的審査が行われる。弁護士も、提訴などに先立って、要件不備がないかどうか事前相談したりする場合もある。

→「やっぱり東京地裁の事件受付は凄いね。」

 裁判を実際に担当する裁判所内の組織のこと。民事事件は民事部、刑事事件は刑事部で、大規模庁は何十ヶ部もある。訴状などの最初の書面は事件受付に提出するが、実際に裁判が始まると、担当する部とやりとりすることになる。

→「あのの裁判官は、うるさ型だから大変だよ。」

証拠調べ  証人尋問のこと。証拠というと、証人に限らず書証もふくまれるが、裁判所の期日で証拠調べと言うときは、たいてい証人尋問のことを指す。

→「次回の期日は、証拠調べとします。」

弁論兼和解  既に死語となった旧民事訴訟法下での用語。新民事訴訟法下では、「弁論準備手続」という。やっていることは同じ。
 これは法廷ではなく裁判官室に隣接した和解室や応接室という閉じられた空間で、双方の主張を具体的に整理したり、和解の話をしたりする。

→「弁論準備手続といっても、言葉が変わっただけで、弁論兼和解とおなじだよね。」

修習生  司法修習生のこと。研修生とは言わない。詳しくは、こちらをご覧下さい。

→「彼女は修習生なのに、弁護士顔負けの実務知識を持っている。」

 司法研修所の入所年度に応じて付けられた期のこと。今年入所なら54期。

→「あの裁判官は、僕よりが下だけど優秀だ。」

クレサラ  主にサラ金や商工ローン、信販会社など、利息制限法を上回る金利を取っている業者から金を借りて返せなくなった人に関する債務整理事件をいう。クレジット・サラ金債務整理事件の略。

→「クレサラの多重債務は、借りるほうも悪いけど、貸すほうも悪いね」

訟廷日誌  弁護士が使う手帳。訟廷日誌とか弁護士日誌というタイトルで、弁護士会や裁判所などで販売されている。普通の手帳と形態は一緒だが、各種手数料や裁判所の連絡先などが付録として付いているほか、スケジュール記入部分も期日を入れやすいような罫線が引いてある。

→「訟廷日誌を忘れちゃったから、今日の法廷では次回期日を入れられなかったよ。」

謄写  主に裁判所で訴訟記録などをコピーすること。

→「裁判所の謄写は、1枚40円かかるとはボッタクリだね。」

郵券  裁判手続を利用する際に、予め裁判所に納める郵便切手のこと。各種書類を裁判所から当事者に郵送する際に利用される。

→「裁判が終わったら、郵券の残りは返してもらえる。」

送達  裁判所から当事者や弁護士宛に書類が届けられること。通常は特別送達と言って、厳格な書留郵便で郵送される。

→「訴状が送達されたから、答弁書を起案しなきゃ。」

請書  ウケショと読む。正確には期日請書。裁判所が裁判期日を指定した際に、確かにその期日を了承したということを証明するために、弁護士から裁判所に対して提出する書類のこと。

→「次回期日は8月2日ですから、請書を提出してください。」

イゴン  遺言(ゆいごん)のこと。これに限らず、法律用語は独特の読み方をすることがある。

→「遺言(イゴン)だの、兄弟姉妹(ケイテイシマイ)だの、心神耗弱(シンシンコウジャク)だの、境界(ケイカイ)だの、聞かされただけじゃ何の事やらさっぱり分からないよ。」

結審  訴訟手続が一通り終了して、あとは判決を待つばかりになった状態のこと。

→「遂にこの事件も結審した。」

係属  事件が裁判手続中になっていること。「継続」ではないが、意味は同じ。

→「事件は、あの部に係属している。」

合議  裁判は原則として一人の裁判官が担当するが、複雑な事件では、3人の裁判官が共同して行うことがある。この共同体のことを合議体といい、3人の裁判官が事件について話し合うことを合議という。
 ここから転じて、仲間内の法律家が話し合うことを合議といったりすることもある。

→「ぼくが修習生の時は、いつも友達と合議して起案してたから、よく教官に怒られたよ。」

当職  弁護士が、書面の中で自分のことを示す一人称。会話の中では使わない。

→「冠省 当職は○○の代理人として貴殿に対して以下のとおり通知します。云々。」

代理人  民事裁判手続における弁護士のこと。正式には「訴訟代理人」または「申立代理人」。原告代理人とか被告代理人、或いは申立人代理人、相手方代理人などという。
 ちなみに刑事裁判手続では「弁護人」。

→「代理人の先生は、裁判官室に来て下さい。」

職印  弁護士が、書面に捺印する印鑑のこと。「弁護士小川義龍職印」などと記載されている丸印または角印。弁護士会に印鑑登録することになっている。

→「職印は一つしかないから、忘れたら大変だ。」

 検察官のこと。public prosecutor の頭文字の「P」。どちらかというと隠語であり、公には使わない。
 ちなみに、裁判官は「J」、弁護士は「B」、警察官は「K」など。

→「あのJは、いつもの意見ばっかり採用して、Bの意見には耳を傾けないね。」

PS  検察官調書(検察官面前調書)のこと。検察官が被疑者を取り調べた結果をまとめた録取書。刑事公判での供述調書としては、最も強力な効力を持つ。破壊力抜群のデストロイヤーである。否認事件では、これをいかに切り崩すかが弁護人の腕の見せ所かもしれない。
 ちなみに「KS」と言ったら、警察官調書。PSよりは圧倒的に効力が低い(弁護人が不同意といったら、そもそも法廷に提出することすらできない。)。

→「PSとKSを全部不同意にしたから、きっとPはKを証人申請してPSを2号書面として請求してくるよ。」

記録  事件ファイルのこと。

→「打ち合わせで使うから、記録を会議室に持ってきて。」

「にわかには措信しがたい」  判決書のなかでよく使われる言い回し。要するに、信用できないという意味。弁護士同士の会話の中でも、洒落で用いられることがある。

→「君の言っていることは、にわかには措信しがたいね。」

追完  出し忘れた裁判上の書類などを、後から追加提出すること。

→「この訴状には訴訟委任状が添付されていませんので、至急追完してください。」

出頭  裁判期日に、裁判所に赴くこと。一般的には警察に出向くような響きがあって抵抗がある言葉と思われるが、そのような悪い色の付いた言葉ではない。

→「我々弁護士は、毎日裁判所に出頭している。」

訴訟指揮  期日に、裁判官が当事者に対していろいろと指示する言動のこと。

→「あの裁判官の訴訟指揮は強引だ。」

心証  裁判手続中で、裁判官が、原告又は被告のどちらの主張が正しいか、証拠に基づいて意見を内心固めること。判決宣告になるまで、この心証は、当事者が裁判所の顔色を窺う以上には、まず明らかにはされない。

→「証拠調べの結果、裁判官は原告勝訴の心証を抱いたに違いない。」

我が社  裁判官や検察官が、裁判所や検察庁を称していう隠語。弁護士は使わない。
 特に、役所の外に飲みに行ったりして、下らない話をしている際に、「検察庁でさ〜」などと検察官が言おうものなら、近所の客の耳がダンボになってしまうから。
 ちなみに「お客さん」といったら被疑者とか当事者のこと。

→「我が社に今度来たお客さんは、困りものだね。」

 

 

<東京弁護士会所属>
弁護士 小 川 義 龍
<第一東京弁護士会所属>
弁護士 遠 藤 幸 子

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